病院の中庭です。春には一面タンポポの花が咲きます。当医局が「お花畑」状態という意味ではありません。念のため。

2015年3月31日火曜日

神経発達症の人のための人間関係マニュアル02

ブログ管理担当者のまさぞうです。

先月アップした,
「神経発達症の人のための人間関係マニュアル」
の続編です。

今回のテーマは,一言でいえば
「人を動かしたいと思えば,まず自分が一生懸命やるしかない」
ということです。
夢も希望もない結論ですみません(笑)。

一般に神経発達症の人は,
独りでする仕事は比較的得意だが,
チームワークや,管理職として部下に接するのが苦手と言われます。
コミュニケーションがうまくとれず,
また人の気持ちがよく分からないため,
相手の感情を逆なでするような行動をとってしまい,
同僚や部下から嫌われてしまうことが多いのです。

今回は日本史上最大のカリスマの一人,
西郷隆盛の登場です。
西郷隆盛(南州先生ともいいます)は明治維新の立役者の一人で,
維新の功業を立てた後,
明治十年の西南戦争で反乱軍の大将として死にます。

この人の人間的魅力は恐るべきもので,
たまたま反乱の時に居合わせた他県の若者が
「自分はここへ来て親しく西郷先生に接することができた。
一日(西郷)先生に接すれば,一日の愛が生じる。
三日先生に接すれば,三日の愛が生じる。
親愛の情は日に日に増して,もはや離れることなどできない。
今はただもう先生と生死を共にするだけだ」
と自ら戦死を選んだほどでした。

この西郷隆盛の言葉が「西郷南州遺訓」という本になって残されています。
岩波文庫版遺訓第4にいわく
「万民の上に位する者,己れを慎み,品行を正しくし,驕奢を戒め,
節倹を勉め,職事に勤労して人民の標準となり,
下民その勤労を気の毒に思うようならでは,政令は行われがたし」

現代語でいうなら,
「人の上に立つ者は,自らの行動を律し,贅沢をせず,
謙虚に仕事にうちこんで部下の模範となり,
部下がその苦労を気の毒に思うくらいでなければ,
下の者は動かない」
ということになるでしょうか。

いくら言葉で格好いいことをいっても,
上司が部下より短時間しか働かず,
多くの給料をもらって,イヤな仕事を人に回し,
威張りちらしていたら,
部下はいうことを聞いてくれません。

これは明治時代の日本だけの話ではなく,
古今東西を問わず優れたリーダーはみな
部下よりハードに働いています。

古いところでは古代ギリシアの賢人クセノポンは
「キュロスの教育」第1巻第6章8で
理想的君主として描かれているペルシアのキュロス大王に,
「一部の者は,支配者は支配下の者たちより高価な食事をし,
多くの黄金を家に所有し,長時間の睡眠をとり,
あらゆる点で苦労のない人生を送ることにより
支配下の者たちと異ならねばならない,と考えています。
だが私(キュロス)は,支配者は安逸に暮らすことによるのではなく,
前もって工夫をし,労をいとわないことにより,
支配下の者たちと異ならねばならない,と思います」
といわせています。

日本でも「日本書紀」第11巻に
仁徳天皇が民の家から竈の煙が立ち上っていないのを見て
その貧しさを憐れみ,3年間租税を免除したため,
3年後には天皇の宮殿は荒れ放題になったが民は豊かになったこと。
さらにその後3年間(合計6年間!)も租税を免除した結果,
民がみずから争って税を納め,使役に従事したので,
徴税再開後には荒れ果てた天皇の宮殿が
驚くべき速さで新築されたことが書かれています。

また江戸幕府役人の証言を集めた「旧事諮問録」第4編には
江戸幕府将軍の日常生活があまりに質素で多忙なため,
そばで仕える小姓たちがよく冗談に
「おまえは何になる。私は公方様(将軍)にはなりたくない」
といっていたとあります。

現代でも日産自動車の社長カルロス・ゴーン氏が
毎日早朝から深夜まで働くのは有名です。
あまりの長時間勤務に
「セブン-イレブン」と呼ばれていたとか・・・。

まあそういうわけで,
いい上司になるためには
質素倹約のライフスタイルに加えて
部下から気の毒に思われるくらい
一生懸命働かないといけないわけですね。
やれやれ。

私も西郷南州先生を見習って,
ハードワークと質実剛健の生活を心がけましょう。
仕事の合間には,先生の好物である
豚肉と甘い物でもいただきましょうか。
でも西郷先生の持病である
フィラリアや糖尿病は勘弁してほしいですね・・・(笑)。